ベンジャミン・ルーツ最新のお話と一話前のお話、さらに次のお話の予告を掲載
第40話(最新話 暗い部屋
 「本当にしつこい子ね。分かったわ。返すわよ。先に私の指輪を返して」と姫は言った。『のら』は息を切らせながら、開いた窓ガラスの隙間から、車の中の姫に手渡した。すると姫は「ほら返すわ」と言って、『のら』に向かって指輪を投げた。その時遮断機が上がり、再び車が動き出した。「疲れる子ね」と溜息を付きながら、「早く行って」と運転手に強い口調で命令した。
 『のら』は投げられた指輪を追いかけた。指輪は石に当たり大きく跳ねた。そして道路脇で止まった。指輪に近づき、『のら』は横を見た。そこは崖となっていて、「ゴーゴー」という激しい水の音が聞こえてきた。『のら』が恐る恐る指輪を摘み上げた時、一台の車が近づいてきた。それは姫の車であった。車が『のら』の横に止まり、姫は窓越しに「お茶ご馳走様。またお会いましょう。どこで買ったか分かりやすく次は説明してね」と言った。「さ、行って」と運転手に告げると、車が勢いよく発進した。車の音にかき消されたが、小さく「ミャー」と言う泣き声と、崩れる岩の音が谷にこだましたようであった。
 その晩遅く、『マナ』は家に帰って来た。『マナ』はその時、家の明かりが消えていることに気が付いた。「『のら』の奴、もう寝てるのか」と言いながら家に入った。「のら、帰ったぞ」と言って明かりを付けようとしたところ、何かいることに気が付いた。びくっとした『マナ』は後ずさりすると、「お帰りなさい」と言う二つの影があった。じっと見ると、それは『タンゴ』と『カンナ』であった。「『のら』は」と『マナ』が尋ねると、「お客様と出かけられ、お戻りなっていません」と言った。
第39話(一話前 指輪
 「本当にこの子は礼儀を知らない子ね。お退きなさい」と言って、姫は自分の上に乗っている『のら』を突き飛ばした。「ちょっと面白そうな指輪ね。もう少し調べたいわ。私に頂ける」と言った。「ただとは言わないわ。代わりにこのダイヤの指輪をあげる」と言って、姫は自分の指輪の一つを外し、『のら』に渡した。『のら』はその指輪を見て、「ガラス、ガラス、『のら』の宝物を返して」と言って、また姫にしがみ付いた。「しつこい子ね。じゃ、サファイアに、ルビーに、エメラルドもあげるわ。これでいいでしょ」と言って、『のら』に手渡した。『のら』はじっとそれらを見ていた。「色んな色、綺麗、綺麗と言って、見詰めていた。姫は「がめつい子ね」と言って立ち上がった。「じゃ、私は帰るわ」と言って、部屋を後にした。その時『のら』の鈴が「ゴロゴロ」と音をたて、わずかに光ったように思えた。
 姫は待たせてあった車に乗り、「家に帰るわ」と運転手に告げた。車がゆっくり動き出した時、家の中から『のら』が再び現れた。そして「これ、返すから『のら』の宝物を返して」と言って、車を追いかけ出した。姫は運転手に、「早く行って」と催促した。車と『のら』は徐々に離れていく、しかし『のら』は珍しくあきらめずに、姫の車を追いかけ続けた。『のら』の姿がほとんど見えなくなったその時、突然車が止まった。「どうしたの」と姫が叫ぶと、「踏み切りです。電車が来るようです」と、運転手が答えた。なかなか踏み切りの遮断機が上がらない。その時車の窓ガラスを叩く音が聞こえた。窓の外には薄汚れた『のら』の顔があった。
第5章 神の山 (予告)
行方不明になった『のら』は、どうなるのでしょうか。第5章では、谷底に落ちた『のら』が不思議な生き物に助けられ、新たな世界で成長を遂げて行くお話しです。そして『のら』はベンジャミンのお家に戻って来れるのでしょうか。・・・どうぞ最新話を楽しみにお待ち下さい。
第41話(予告 頼まれ物(予告)
<始まりの一節> 朝日が家の中に差し込んできた。その朝日に『マナ』の影が映っている。『マナ』は窓際に立ち外を眺めていた。『マナ』は朝まで『のら』の帰りを待っていたのであった。しかし『のら』は帰ってこなかった。・・・